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「分子イメージング市場の動向と診断技術の展望」調査の結果がまとまりました

2009/01/26

分子プローブの臨床開発は欧米企業が圧倒的に先行、国内企業は画像診断装置の開発で市場を狙う
分子プローブ開発の対象技術はPETが中心、検査対象疾患はがん・循環器・脳神経の3つに集中
分子プローブの国内市場は10年後には現在のおよそ3倍となる300億円市場に成長

市場調査・コンサルティング会社の株式会社シード・プランニング(本社:東京都台東区 梅田佳夫社長、以下シード・プランニング)は、分子イメージング市場と診断技術としての実用性に関する調査を実施し、このほど、その結果をまとめました。

分子イメージング技術は急速に進展し、疾患の早期診断技術として活用する研究が活発化しています。病理組織検査などに比べ非侵襲的であることや、生体内において分子レベルの挙動を調べることができるため、いままでの画像機器などではわからなかった疾病状態のより正確な診断も可能になることも考えられます。

今回の調査では、診断のために研究開発が進められている分子プローブやイメージング機器、解析技術などを対象とし、また研究を進めていくために重要な動物用のイメージング装置・プローブを調査し、分子イメージングを利用した診断技術が医療現場に与えるインパクトや課題、そして市場としての分子イメージングについて明らかにしました。

調査結果の詳細は「分子イメージング市場の最新動向と診断技術としての将来展望」(2008年11月28日発刊)として販売しております。

本調査の結果のポイントは以下の通りです。

なお、用語の詳細は<用語説明>の項をご覧ください。

分子プローブの臨床開発は欧米企業が圧倒的に先行、国内企業は新規画像診断装置の開発で市場を狙う

分子イメージングを疾病診断技術として利用するためのキーポイントは、疾患の状況をより正確かつ安定的に診断できるような分子プローブを開発することである。
分子プローブは体内診断薬に分類され、臨床開発が必要になる。現在、企業が主体となり臨床開発を進めている分子プローブは世界において約30弱であるが、その全てが海外企業によるものである。これらプローブの開発企業の国籍をみると、米国と欧州で9割以上を占めており、国内企業は分子プローブの臨床開発で遅れをとっているという状況である。今後、国内においては分子プローブを開発できるベンチャー企業の育成や、非臨床・臨床試験の整備などが重要であると思われる。

【図1】分子プローブを臨床開発している企業の国籍内訳

国内企業の分子イメージングに関する動向としては、新しい画像診断装置の開発が中心である。日本が優れる要素技術を活かし、どれだけ診断に役立つ機能を付加した画像診断装置を開発・市場投入できるか、国内企業の動向が注目される。

【表1】国内企業の新規画像診断装置の開発例

分子プローブ開発の対象技術はPETが中心、検査対象疾患はがん・循環器・脳神経の3つに集中

分子メージングでは様々な画像診断技術を利用するが、現在、企業によって臨床開発が進められている分子プローブから見た利用技術の半数がPETであり、次いでSPECT(シンチグラフィ検査も含む)、MRIとなっている。PETは他の画像診断技術に比べ感度が高く、炭素やフッ素などが放射性同位体として利用できるため、分子プローブとしての汎用性も高い。PETは今後も分子イメージングを利用した診断技術の中心となると思われる。

一方、検査対象疾患については、診断自体が難しく早期発見が望まれるがん・循環器(心筋梗塞の原因となる血栓など)・脳神経(アルツハイマー型認知症など)の3つに集中している。これらの疾患は患者数が多く、罹患した場合にはQOL(生活の質)が著しく低下するため、分子イメージングによるより早期・正確な診断が求められている。

【図2】企業により臨床開発が進められている分子プローブで利用される画像診断技術
【図3】分子プローブ検査対象疾患

分子プローブの国内市場は10年後には現在のおよそ3倍となる300億円市場に成長

現在利用されている分子プローブはがん領域が中心であり、その国内市場は2008年度でおよそ100億円強であると推測される。前述の通り国内では新規分子プローブの臨床開発が進められていないため、すぐに市場が拡大するという状況ではない。しかし、海外ではアルツハイマー型認知症など市場拡大に大きく貢献する可能性がある新規プローブが開発されており、数年後にはこれらが国内でも臨床開発が進められ、上市されると思われる。これにより分子プローブの市場は大きく拡大し、2018年には300億円程度の市場を形成すると推測した。

<用語説明>

・ 分子イメージング(Molecular Imaging)
PETやSPECT、MRIなどを用い、ヒトや動物を生きたまま生体内における分子レベルの挙動を非侵襲的に画像化する技術
・ 分子プローブ
各種の疾患の原因となる遺伝子・タンパク質の活性制御を担う様々な化合物やその化合物に結合する標識化合物のことでリガンドやトレーサーとも呼ばれる。例えばPETの場合はポジトロン放出核種を化合物にラベルして分子プローブとする。またMRIの場合は核スピンを持つ原子が分子プローブとして利用される。
・ PET(Positron Emission Tomography)
生体にポジトロン放出核種で標識した化合物などを投与、ポジトロンが消滅する時に放出されるγ線をPETカメラによって検出し、コンピューター上で化合物の分布などを画像するもの。がん細胞が通常よりもブドウ糖の取り込みが数倍多いことを利用し、がんの有無/活動性を調べる18F-FDGを利用したPET検査が普及している。
・ SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)
シングルフォトン放出核種を患者の体内に投与し、その分布をガンマカメラで撮影するもの。SPECT検査では断層撮影し、立体的な画像をコンピューター上で構成する。基本原理はPETと同じであるが、PETと比べ定量性や使用できる元素の汎用性が劣る。
・ MRI(Magnetic Resonance Imaging)
核磁気共鳴 (NMR) 現象を利用して生体内の内部の情報を画像化するもの。放射線を使用しないのでPETやSPECTに比べ、安全性が高いとされている。

<調査概要>

調査対象
  1. 分子イメージング関連国内企業・・・・・・15社
  2. 分子イメージング関連海外企業・・・・・・32社
  3. 分子イメージング関する研究者・・・・・・・3名
調査方法
  1. 対面ヒアリング調査
  2. 当社所有の既存データ・オープン情報による調査
調査項目
  1. 分子イメージングに関する市場(分子プローブ・装置・動物試験受託)
  2. 分子イメージングを疾病診断として利用するための課題や今後の方向性
  3. 分子イメージングに関する国内企業や研究機関、海外企業における研究開発動向や提携関係
調査時期
2008年7月〜11月
本件に関するお問合せ先
株式会社シード・プランニング
〒113-0034
東京都文京区湯島3-19-11 湯島ファーストビル4F
TEL : 03-3835-9211(代) / FAX : 03-3831-0495
E-mail : info@seedplanning.co.jp
担当 : 番場(ばんば)