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調査結果

2020/12/08

2020年度市区町村における多職種連携ネットワーク構築状況に関する調査結果
<調査結果のポイント>
多職種連携ネットワークを自治体主体で運営している、あるいは希望する地域が半数を超え、“新しい生活様式”を踏まえた活用へと深化が期待されている。
地域に医療連携ネットワークがある自治体は約35%、多職種連携ネットワークがある自治体は約半数
地域に多職種連携ネットワークがある自治体のうち、独自予算により多職種連携ネットワークを導入・
  運用している自治体は約4割
独自の財源で構築した多職種連携ネットワークの45%が2017年〜2018年の2年間に構築
独自財源で構築した多職種連携ネットワークの約9割が「診療情報、看護・介護記録、バイタルデータ、
  患部画像等の患者情報の共有」に活用
独自予算で構築した多職種連携ネットワークの年間維持費用は「50万円未満」と「250万円以上」が
  それぞれ約3割。一方初期構築費用は「0円」が約半数。
独自予算で構築した多職種連携ネットワークの主な財源は「一般会計」が約半数
約9割が新型コロナウイルスと大規模災害で多職種連携ネットワークの重要性が増していると回答
今後、医療・介護・その他の専門職が連携して取り組むべき課題の第1位は「災害時の情報連携効率化」

(※)全国の市区町村 1916自治体(高齢福祉課 在宅医療・介護連携推進事業担当者)が対象

市場調査・コンサルティング会社の株式会社シード・プランニング(本社:東京都文京区 代表取締役 梅田佳夫、以下シード・プランニング)は、2020年度市区町村における多職種連携ネットワークの構築状況に関する調査を行い、このほどその結果をまとめましたのでお知らせいたします。

政府は団塊の世代が75歳以上になる2025年をめどに、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自立した日常生活を営むことができるよう、地域包括ケアシステム構築を目指しています。

一方、少子高齢化はもとより、新型コロナウイルス感染症や大規模な地震や台風などの激甚災害などにより、地域社会の形成において専門職の参加・連携の重要性が増大しています。

また今後少子高齢化による人材の不足や減少はさらに深刻化することから、在宅医療を発端に構築した地域包括ケアシステムは、2040年に向けて大きく進化・多様化していくことが予想されます。

既に各地域では、専門職の情報共有ネットワークシステムとして、ICTを活用した地域医療連携ネットワークや多職種連携ネットワークが多数構築されていますが、その多くが地域中核病院や医師会が主導しています。そこで本調査は、多様な地域課題に対処する地域プラットフォームとして、市区町村の独自財源で運営する多職種連携ネットワークシステムの実態把握を行うためにアンケート調査を実施しました。

本調査結果のポイントは以下の通りです

調査結果のポイント

地域に医療連携ネットワークがある自治体は約35%、多職種連携ネットワークがある自治体は約半数

自治体内におけるICTを活用した医療連携ネットワーク、多職種連携ネットワークの有無は、医療連携ネットワークは35.2%が「ある」、多職種連携ネットワークは49.4%が「ある」。

自治体内における 医療連携ネットワーク/多職種連携 ネットワークの有無

※1「医療連携ネットワーク(病病連携・病診連携)」とは
患者を中心としたより質の高い医療、介護サービスを提供するため、地域の病院、診療所、薬局、介護関係施設等をICTによりネットワーク化し、患者の電子カルテ等の医療情報を共有するシステム。

※2「多職種連携ネットワーク(医療・介護・福祉連携)」とは
医療・介護関係者の間で、医療・介護情報共有の効率化や相互コミュニケーションを図るため、地域の病院、診療所、薬局、介護関係施設、福祉施設、行政等をICTによりネットワーク化し、患者・高齢者・障がい者等の医療・介護・健康情報等を地域包括ケアシステムの実現のために共有するシステム。


地域に多職種連携ネットワークがある自治体のうち、独自予算により多職種連携
  ネットワークを導入・運用している自治体は約4割

自治体内に多職種連携ネットワークがあると回答した自治体のうち、独自の財源により導入・運用している自治体は42.7%。

独自予算で構築・運用している多職種連携ネットワークの有無
独自の財源で構築した多職種連携ネットワークの45%が2017年〜2018年の2年間で構築

自治体の独自予算により導入・運用している多職種連携ネットワークの構築時期は、24自治体が「2017年」、21自治体が「2018年」であった。
またこれらのネットワーク構築に活用しているサービスは、導入数が多い順に、「IIJ電子@連絡帳サービス(株式会社インターネットイニシアティブ:IIJ)」、「メディカルケアステーション(エンブレース株式会社)」、「多職種連携情報共有システム「バイタルリンク」(帝人ファーマ株式会社)」、「カナミッククラウドサービス「TRITRUS」(株式会社カナミックネットワーク)」、「医療・介護連携サービス「MeLL+(メルタス)」(株式会社ワイズマン)」。

独自予算で構築した多職種連携ネットワークの構築年
独自財源で構築した多職種連携ネットワークの約9割が「診療情報、看護・介護記録、
  バイタルデータ、患部画像等の患者情報の共有」に活用

自治体の独自予算により導入・運用している多職種連携ネットワークで実現している取り組みは、「診療情報、看護・介護記録、バイタルデータ、患部画像等の患者情報の共有」が最多の89.1%、次いで「SNS・掲示板等による専門職間のコミュニケーション」が68.3%。

独自予算で構築した多職種連携ネットワークで実現している取り組み
独自予算で構築した多職種連携ネットワークの導入費用は「0円」が約半数、維持費用は
  「50万円未満」と「250万円以上」がそれぞれ約3割

自治体の独自予算により導入・運用している多職種連携ネットワークの、初期導入費用と維持費用は、

  • 初期導入費用は「0円」が最も多く51.5%、次いで「100万円未満」が22.1%。
  • 維持費用は「250万円以上」が最も多く29.3%、次いで「50万円未満」が28.3%。

医療連携ネットワークは、システム構築費用が安いものでも数百万円~数千万円、高いものになると数億円~数十億円規模になる。またシステム構築費用に応じて年間の維持費用も数百万円~数千万円と高額になる。それに対して多職種連携ネットワークはSaaSを利用しているため、導入費用も維持費用も比較的負担の少ないものとなっている。

初期導入費用/維持費用
独自予算で構築した多職種連携ネットワークの主な財源は「一般会計」が約半数

自治体の独自予算により導入・運用している多職種連携ネットワークの、主な財源は、約半数が「一般会計」であった。

多職種連携ネットワークの主な財源

また自治体の独自予算により導入・運用している多職種連携ネットワークを活用して、今後、どのようなことを実現したいかを尋ねた。

  • 「一般会計」で構築した自治体は「災害時の情報連携」が最も多く64.6%、次いで「入退院情報の連携」58.3%。
  • 「特別会計で」で構築した自治体は「多職種連携カンファレンス、地域ケア会議等の実施」と「入退院情報の連携」が最も多くそれぞれ63.2%。
  • 持続的な財源を確保している自治体は、在宅医療連携にとどまらない広がりのある展開を検討している。
一般/特別 会計で多職種連携ネットワークを構築した自治体が今後実現したい取組み
約9割が新型コロナウイルスと大規模災害で多職種連携ネットワークの重要性が増していると回答

新型コロナウイルス感染症や大規模災害により、ICTを活用した多職種連携ネットワークの重要性が増しているか尋ねたところ、いずれについても「非常にそう思う」と「まあそう思う」を合わせて約9割が、重要性が増しているとしている。

感染症の影響/大規模災害の影響
今後、医療・介護・その他の専門職が連携して取り組むべき課題として、約43%が
  「災害時の情報連携効率化」と回答

今後、住民の安全・安心な暮らしを支えるために、医療・介護・その他の専門職が連携して取り組むべき課題の1位は「災害時の情報連携効率化」で83.9%、次いで「消防職員と専門職間の患者情報の共有効率化」が43.2%。

今後、医療・介護・その他の専門職が連携して取り組むべき課題

現在、自治体の独自予算で構築した多職種連携ネットワークは、主に「診療情報、看護・介護記録、バイタルデータ、患部画像等の患者情報の共有」や「SNS・掲示板等による専門職間のコミュニケーション」に用いられている。一方、今後の医療・介護・その他の専門職が連携して取り組むべき課題として最も多く挙げられたのは「災害時の情報連携効率化」であった。

多職種連携ネットワークシステムは、高齢者が医療や介護を要する状態になっても、住み慣れた地域でできるだけ長く自立した生活ができるよう、在宅での医療と介護を包括的かつ継続的に提供する多職種連携体制の構築をサポートする情報共有ツールとして普及してきた。しかし、昨今の大規模災害や新型コロナウイルス感染症など予測が難しい状況が頻発する中、各自治体ではさまざまな対応を迫られている。

本アンケートの最後に、今後、地域住民の安全・安心な暮らしを支えるために、医療・介護・その他の専門職が連携して取り組むべき課題について自由記述形式で尋ねた質問では、「災害対策」、「感染症対策」、「在宅療養の継続・看取り」、「Advance Care Planning(ACP)」、「障がい者や全世代に対応可能なネットワークづくり」など、幅広いニーズが挙げられた。多職種連携ネットワークシステムは、高齢者の医療・介護情報の共有にとどまらない発展的な活用が期待されている。

調査概要

調査主体   株式会社シード・プランニング

調査対象   全国の市区町村 1916自治体(高齢福祉課 在宅医療・介護連携推進事業担当者)

調査方法   郵送アンケート調査

調査時期   2020年9月~10月

※本調査内容を転載・ご利用いただく場合は、以下の例のように出典を記載してください。
  記載例:(出所:シード・プランニング調べ(2020年9月〜10月)

本件に関するお問合せ先
株式会社シード・プランニング
〒113-0034
東京都文京区湯島3-19-11 湯島ファーストビル 4F
TEL : 03-3835-9211(代) / FAX : 03-3831-0495
E-mail : info@seedplanning.co.jp
広報担当