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第4のがん治療法『がんワクチン』開発の現状と将来展望を調査

2006/10/17

「がん予防ワクチン」が米国で承認され始め、日本でも臨床試験中
"がん治療ワクチン市場"は欧米では2010年頃からが立上がり

調査・コンサルティング会社の株式会社シード・プランニング(東京・台東 梅田佳夫社長)は、外科的手術、放射線照射、化学療法に続く第4のがん治療法として期待されている『がんワクチン』に関する調査を実施し、調査研究レポート「2006年版がん治療の最前線−がんワクチン開発の現状と展望−」(2006年5月発刊)にまとめた。

株式会社シード・プランニングでは医薬・バイオに関する技術動向、市場調査を継続的に行なっているが、このほど、国内のがんワクチン開発ベンチャー企業、がんワクチン研究者等にヒアリング調査を行い、がんワクチンの将来展望及び開発動向についてまとめた。

本調査のポイントは以下の通りである。

"がんワクチン"の第一号が米国で承認

今年6月、世界大手製薬企業のメルクが開発した子宮頸がんワクチン「ガーダシル」が米国で承認された。日本においても、メルク子会社の万有製薬が3年後の上市を目指し、同ワクチンの臨床試験を開始している。さらに、グラクソ・スミスクライン日本法人が同じく子宮頸がんワクチンの臨床試験を進めている。これらはウイルス感染者が、がんに進展するのを予防するワクチンである。一方、予防用ワクチンだけでなく、新しいカテゴリーとしてがんの"治療用"ワクチンの開発も進んでいる。

第4のがん治療法、がんワクチン

がんワクチンは、外科的手術、放射線療法、化学療法に加え、第4の治療法として期待されている。さらに、がんワクチンは、副作用が少ないと考えられることから、がん治療のベーシック療法として他の治療法との組み合わせで広く使用される可能性があり、5年、10年後にはがん治療の世界において一つのカテゴリーとして確立することが期待されている。

がん治療ワクチンとして、DNAやペプチド、タンパク質から細胞を用いたものまで、様々な特徴を持つワクチンの開発が進んでいる。また、ワクチンが取り込まれやすいよう様々なアジュバントを付加したもの、個々の患者に合わせたテーラーメイド・ワクチン等、先端の科学的知見と技術が結集されている。特に、前立腺がん、白血病等の血液がん、肺がん、脳腫瘍、悪性黒色腫等において臨床開発が先行している。

海外ではこれまでに150以上の臨床試験が行われ、現在11のがんワクチンがフェーズIIIまで進んでいる。日本においても、学会発表では20近い臨床研究が行われており、ベンチャー企業では、株式会社グリーンペプタイド、株式会社イミュノフロンティア、オンコセラピーサイエンス株式会社が、国内外で治験の準備を進めている。

膨大な潜在適応者を持つがんワクチン

がんワクチンは、様々ながん種、サブタイプ、さらに早期から末期まで幅広く使用される可能性を持つ非常にポテンシャルの高い医薬品で、既存の治療法では効果を期待できなかったがん種やサブタイプ、病期での開発が進められているほか、副作用が少なく効果が持続する特徴から術後補助療法への適応が期待されている。進行・再発がんの集学的治療への応用や末期患者のQOL向上、延命等に加え、将来的には早期がんでの使用にまで広がる可能性を持っている。一方、これまでの治療法ではがん特異的な抑制が困難とされてきた転移巣に対する効果への期待も高い。

【図1】欧米における主要がん種のがんワクチン適応者数
(シード・プランニング予測)
【図2】日本におけるがんワクチンの臨床効果と適応患者の可能性
(シード・プランニング分析)

2015年には数百〜数千億円の世界市場に

がんワクチンは今後他に治療法のないUnmet Medical Needsの高いがん種やサブタイプに対し製品化が進み、その後患者数の多いがん種にまで拡大して、2015年には数百〜数千億円の世界市場の形成が期待され、5年、10年後にはがん治療の世界において一つのカテゴリーとして確立することが期待されている。

【図3】現在の抗がん剤使用状況と10年後のがんワクチンの適応患者
(シード・プランニング予測)

<調査概要>

調査対象
  • 国内のがんワクチン開発ベンチャー企業・・・2社
  • 国内のがんワクチン開発研究者・・・・・・・・・・6名
  • 欧米のがんワクチン開発ベンチャー企業・・・33社
調査方法
対面ヒアリング調査・・・・ベンチャー企業2社、6大学、製薬企業6社
調査項目
  • がんワクチンの内容
  • がんワクチンの使用法と市場性
  • がんワクチンの開発動向
  • がんワクチンの課題
  • がんワクチンの注目研究者、企業
調査期間
2006月1月〜3月

※参考

医学の進展によりがん治療は刻々と変化している。低侵襲的外科手術法や新しい放射線療法、より効果の高い抗がん剤の登場やその組み合わせ療法の確立、第二世代ホルモン剤等の登場により治療の改善が進み、最近ではグリベック、リツキサン、ハーセプチン等の分子標的薬、抗体医薬の登場が、がん治療の世界に大きなインパクトを与えている。

一方、がん治療ワクチンの開発はDNAやペプチド、タンパク質から細胞を用いたものまで、様々な特徴を持つワクチンの開発が進んでいる。また、ワクチンが取り込まれやすいよう様々なアジュバントを付加したもの、個々の患者に合わせたテーラーメイド・ワクチン等、先端の科学的知見と技術が結集されている。

【表1】がん治療法の比較
本件に関するお問合せ先
株式会社シード・プランニング
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担当 : 武部